最近社内サービスのデザインをチェックしていて、制作者の読解力というものがいかに重要かということを考えさせられました。
我々のようなWeb制作会社はクライアントあってのWeb制作です。
確かに自社でWebサービスやアプリを自発的に開発して運用もしていますが、使ってくれる方、見てくれる方がいなくては存在の意味はありません。
そういう意味では受託制作も社内制作も同じです。
いくら自分が良い、格好良い、きれいと思ったものでも相手の依頼があっての制作であれば、これはしょうがないことです。
現代美術家の村上隆さんの著書を何冊か読ませていただいたのですが、この方は美術家でありながら美術をビジネスとしてとらえられています。
依頼主のいるビジネスである以上、きちんと挨拶や礼儀がなっていなければ相手に対して失礼だし、ビジネスとして成り立たない。
ですので、制作のみではなく挨拶などの日常生活に及ぶ部分まできちんと指導されているそうです。
これはWeb制作でも同じです。
まず、
『相手が何をして欲しいと思っているのか?』
『どうしてあげたら喜ぶか?』
『相手がどう思うか?』
『相手が何をしたいと思っているのか?』
例えば、それは資料、メールの応答ひとつ取ってみても同じことだと思います。
資料作りひとつとってみても相手が見やすく、読みやすく。
例えば線がひどくずれていたり、誤記が多く抜けの多い資料が出てきたら少し心配になりませんか。
これはデザインではないので、と言ってしまえばそれまでですが、提案資料などの質と制作物の質は比例すると思っています。
確認のための資料といえども、その資料が汚かったり読みにくいと、その後の制作物の質に投影してしまうのではないかと感じるのは私だけではないと思います。
メールなどの返信にしても、早ければ早いほど良いわけですし、書き方や言い回しひとつとっても相手の感じる印象は大きく違ってきます。
例えば出来ないこと、に対しての連絡でも単純に「出来ません。」「無理です。」とだけ言われてしまうと、理解は出来てもあまり良い印象は持たれないでしょう。
そこまでは出来なくてもこれなら出来るという代替案のひとつでも出してくれる制作会社であれば、その後相談出来る相手だと思い、違った形で制作を出来るかも知れません。
よく制作会社の変更を検討している、という相談を受けたりしますが、変更する理由を伺ってみると、「応答がない」「期待しているレスポンスが返ってこない」などの対応面の理由で、制作物そのものの質についてではないことがほとんどです。
「お客様第一主義」のようにへりくだる必要まではないと思いますが、ディレクションという名目でお金を取っている以上、きちんとした対応も制作の質の一部分です。
結果良くてもすべて良いわけでもありません。
実際の制作はというと、作る人間にとっては自分が作れるから、とどうしても自分本位に考えてしまいがちです。
『自分が作りやすいから、自分が好きだから。』
『自分はこういうデザインが得意だから。』
『自分にはこのテイストは向いていない。』
自分自分。
出来ないことを出来るという必要はないと思います。
でもプロであれば自分より相手のことを最優先に考えるのは必要なことです。
相手にとって有意義な方向に持っていってあげるのはプロの役目です。
デザインにしてみても、相手の望んでいることが投影出来ていないデザインは、いくら小手先のテクニックが優れていても共感出来ないでしょう。
ダサいとか格好良いとかそういうのは個人の主観です。
よくデザインがうまくいかなくなると「具体的なイメージを!」と憤怒されてしまう方がいらっしゃいますが、依頼する側にとってみればそれを提示して欲しいからお願いしているのだと思います。
システム仕様書などでも、自分の分かっている用語は相手も当然分かっている、ここまで書かなくても普通分かるだろ?と自分の価値基準で作ってしまってはいないだろうか。
クライアントのWebリテラシーとかセンスとかそういうのは関係ありません。
相手がやりたいこと、発信したいことに対していかにしてデザインや仕組みで応えてあげるかというところが一番重要なのです。
Web制作というとどうしても、技法や理論的なところに考えがいってしまいがちです。
もちろん良いデザインを沢山見ること、アイデアや技術をストックすることは良いことです。
ただ、それも収集しただけでなくどうしてそれが良いのか読解して理解することは必要です。
依頼主のして欲しいことを読み解く、先回りをする、そのうえでストックしたアイデアを反映する。
すべてにおいて読解力というものは重要であるということをここ最近考えていました。
株式会社8bit (エイトビット)
東京都目黒区でWebサイト制作、Webシステム開発などを行っております。
コーポレートサイトやWebサービスの企画・提案を得意としており、自社での経験を元にアイデアをカタチにするお手伝いをさせていただいております。