「スランプ」。
絵を描く人や、デザインをする人。
何かモノを作る人には必ず起こると思います。日々デザインを作り続けていると、自分の作るものが”なんかうまくいかない”、”なんかまとまらない”、”こんなのではダメだ”。そんな風に見えてしまい、なかなか出来上がらず時間ばかりかかってしまう。
これ実は、成長の兆しです。毎日の制作で目が肥えて、自分の作るものに対して納得いかなくなってしまうという現象。苦しみぬいた末に完成したものは前よりずっと良いものになっているはずです。スランプを一度脱出すると、一皮むけた自分が完成しています。
“もっと良いものを”と思って作ったものが実際に形になっている。これこそ生みの苦しみで、乗り越えたときの達成感は計り知れないでしょう。
しかし、仕事でデザインをやっている以上スランプなんて言っている暇なんてありません。後ろにずれていく他のタスク、迫りくる納期。スランプに陥らないよう努めるのも、プロの仕事のうちだと最近強く感じています。
スランプに陥らないためにはどうするか。それは自分の中に引き出しを増やすこと。アイデアを枯渇させないこと。自分の中に”何もない状態”が起こらないようにすることです。
そのためには日々、たくさんのモノを見て、聞いて、感じて。蓄積していく必要があります。
アイデアを枯渇させないために
では、アイデアを枯渇させないためにできることってなんでしょう?当たり前のことかもしれませんが、私が気をつけていることを書いておこうと思います。
雑誌を手に取る
雑誌には、流行のモノがたくさん並んでいます。今流行りの服や食べ物、新しいお出かけスポットetc…それぞれのモノを綺麗に見せるために様々な工夫が凝らしてあります。できればWeb業界紙以外のものの方が良いと思っています。
TOKYO Walker、Hanako、anan、オレンジページ、じゃらん、時には自分と全く縁のないものも手に取ります。釣り雑誌とか、Gooとか、Tarzanとか。綺麗なものを見るのも良いですが、膨大な情報量をいかに綺麗に整理するかの「まとめる力」を見ています。特に旅行雑誌なんかは文字・写真の洪水ですが、綺麗にまとまってて好きです。見ていてため息が出ます。
フリーペーパーや駅で配っているチラシ、車内吊り広告なんかもなんとなく目で追ってしまいます。
余談ですが、私はWeb業界の流行りと現場で求められるものはかけ離れている場合が多いと感じています。
積極的にバナーをクリックする
調べ物をしている時、オモシロ記事を読んでいる時。画面の端には必ずバナーがあると思います。このバナー、避ける人が多いかと思いますが、私は敢えて積極的に押して回ります。
デザインまとめ見れば済むのでは、と思った方もいるかと思います。綺麗なまとめサイトを巡回するのも大事ですが、しかし、綺麗すぎて参考にならない時というのも多々体験しました。
バナーをクリックするとだいたい”適度なレベル”のデザインのサイトと出会えます。その”適度なデザイン”も実務レベルでは大事だと思っています。
時々、眩しいくらいの美しいサイトや、目を疑うほどの驚きのデザインとも出会えます。
(もちろん、まとめサイト様にも毎度お世話になっています。ありがとうございます。)
寝る前に5分、その日”いいな”と思ったことを思い返す
“そういえば今日コンビニで買ったあのお菓子、なんでおいしそうに見えたんだろう。「ふわっ」って書いてあったの覚えているから、きっと文字が目立ってんだな。”
“今日電車の中で見かけたお姉さん、ファッションセンスすごく良かったなぁ、あの色面積、大事だ。”
“そういえば新しいアプリ落としたんだった。便利だけど、ここをもう少し目立たせればもっと良くなるだろうなぁ。”
だいたい、そんなことをちょっと考えてから眠ると、なんとなく長く覚えてられる気がするんですよね。立ち読みした雑誌の内容なんかも思い返すと良いと思います。しかし忘れがちです。
デザインという仕事
デザイナーという仕事は、10人お客様がいれば、10人それぞれが良いと思うものを作らなければなりません。もちろんサイトの主旨やターゲットを考えて制作しなければなりませんが、アジアンテイストの柔らかい色合いが好きな若い女性もいれば、車のパンフレットのようなメタリックで重みのあるデザインが好きな男性もいます。中にはデザインというものが全く想像つかなくて、とりあえず綺麗にまとまっていればそれで良いという方もいらっしゃいますが、結構な確率で、「デザイナーさんが何かアイデアを持っている」と期待されています。これを読んでいるデザイナーさんは、そんな期待されても…となってしまうかもしれませんが(もちろん私の心の自信のない部分にはそれが少なからず存在しています)、私は提案することもデザイナーの仕事のうちだと思っています。
何年かデザイナーをしていると、頭の中の引き出しはパンパンで苦しくなりますが、それでも上から押し込み続けます。作っている最中も、頭の中に見当たらなければWebでも本でも、探し回って見つけます。見たものを自分の中で上手に昇華して、目の前のデザインに当てはめていきます。
常に押し込んでおかないと、気がつけば空になってしまいます。出てこなければ何も作れません。
日々の努力を怠ると、本当に突然スランプは起こります。少し仕事が忙しくて、帰ってお風呂に入ってすぐ寝て… お休みの日もだらだら過ごして。そんな生活をしていると、突然。
今日は最近のんびりしすぎたツケか、枯渇の兆しが見えたので慌ててラジオをつけました。仕事中、ながらだけれど、耳だけでも肥やしておきたい。今も、帰りにコンビニで雑誌を見繕うつもり満々でこの記事を書いています。
私はこんなことを感じながら制作をしています。新人デザイナーさんなら尚更自分の非力さに悩みながらボタンやバナーを作っているかもしれません。
でも、あなたの先輩デザイナーさんも、普段はしれっと仕事しているよう見えて、同じことを考えているかもしれません。
日々精進です。