Web制作を進めていく中で、お客さまと制作会社の認識の違いで、作業範囲や修正回数を巡ってトラブルが発生することがあります。
当社でも恥ずかしながら、お客さまに説明が不足していたり、ご理解いただいていたものと解釈して制作を進めてしまい、トラブルとまではいかないにしても軽く揉めることは多々あります。
品質や進捗遅延のクレームに関しては制作側の責任ですが、仕様変更や追加作業の範囲をめぐる揉め事についてはお互いの主張する部分もあるので、なかなか難しい問題です。下手をするとお互いの主張が平行線のままで訴訟ものの問題にまで発展することも考えられます。
制作業界の中では仕様変更や作業範囲を巡るトラブルがあると、お客さまが強引だとかクレーマーだみたいな感じがちです。確かに不条理なことや強引な値引きや不払いなど、実際にあるようですが、制作会社の曖昧な見積り内容にもその原因はあると思います。
どうしても作業範囲などを巡るトラブルになると、被害者意識が強くなってしまい、自分たちの主張は正しく、相手が間違っていると考えてしまいがちですが、トラブルを防止するためには自分たち制作サイドの落ち度についても見直す必要はあると思います。
よく制作上のトラブルは契約時に条件をきちんと詰めていかなったことが原因として挙げられます。
もちろん、それもあるのですが、私は制作会社が出す見積り書にも問題があるのではないかと思っています。
契約書というのは大きな括りで、見積りは詳細です。
この詳細な部分をきちんとしておかないから、お客さまとの認識違いが制作レベルで発生するのではないかと思います。
ではどういう部分に気を付けたら良いのか、当社の経験からではありますが、ポイントを挙げていたいと思います。お客さまと制作会社の関係性や口約束の部分については除いて考えています。
制作会社によって状況は異なると思いますので、あくまでも参考程度に読んでいただければと思います。
ページ数などの単位が曖昧。
制作会社によってはページ数ではなく、制作工数で算出する会社もおられると思います。最近のWebサイトの制作ではページによって難易度も異なるし、一概にページ単価いくらといえないところがあります。
しかし、これが元でここまでやってくれると思っていた、ページ数で見積もられてないからやってくれると勘違いする、などのクレームに繋がることもあります。
現に工数ではなく、ページ数で見積もって欲しいと言われる会社も結構あります。
当社ではどうしているかというと、印字した際にA4サイズ程度を1ページとしてページ単価をカウント、そこにCSSの設計費を工数として計上しています。
プログラムでもそうですが、設計や開発関係に関しては工数で出さざるを得ないことは、たいていのお客さまにご理解いただけます。
工数についても、どうしてこの日数なのかということもきちんと説明しておくと良いかもしれません。
例えば根拠が自社で今まで開発してきた経験値としての工数であれば、その会社に頼む以上これくらいかかるんだ、と納得してもらえるでしょう。
受注前にその工数を減らせ!(作業スピードを速めろ!)というほど乱暴なことはあまり言われないかと思います。(わかりませんが)
作業項目に対しての作業範囲が曖昧。
たとえばデザインに関してデザイン案を何案出してくれるのか?どこまで修正OKなのか?システム開発についてはどういった仕様を想定しているのか?など、その作業項目に対して具体的な内容について、きちんと記載なりしておかないと後で揉めることがあります。
よくあるのが制作後の仕様変更。
最初に契約時にリップサービスで「ある程度は進めながら修正しますよ」なんて言ってしまうと、あとで「やってくれると言ったじゃないか!」と言われてしまいます。
(これ、私は時々やらかしてしまいます。)
Web制作では、見積り時に詳細な仕様書があることは稀で、受注してから詳細な仕様を詰めていくことが多く、後からの仕様変更に関するトラブルや軽い揉め事は絶えません。
詳細な仕様を詰めて提案してから受注出来れば、制作現場としては一番やりやすいのかも知れませんが、なかなかそういうわけにかないのが現状です。
この程度の仕様を想定している、というのは既存のサービスや自社の事例などをもとに、きちんと最初に意思疎通が出来ていると良いかと思います。
作業項目に対しての対応範囲について制作においては永遠の課題で、デザインが納得いかないなどは作業範囲だけでは計り知れない部分もあり、制作業務の難しいところだと感じています。
作業項目の作業が何をやってくれるのか分からない。
その最たるのはディレクション費です。実際に制作をおこなう際は、ディレクターが窓口となってお客さまのヒアリングを行ったり、進捗報告やお客さまからの修正などをまとめます。
ですので、ディレクション費というのは必ず計上しないといけません。
しかし、Web制作業界ではないお客さまにとってみると、このディレクションというのが具体的に何をやってくれるのか謎。
例えば、ディレクション費=コンサルやサポートだと思われているお客さまの場合、制作とは関係のないメーラーの設定やサーバ周りの設定(例えば社員のメールアドレスの追加)など、インターネットに関わることすべてをサポートしてくれると思われてしまいます。
細かいところですが、こういう部分について曖昧にして見積りに計上してしまうと、作業範囲ではない作業であっても、やってくれると思っていた側にとってみると、対応の悪い会社となってしまいます。
やはりディレクションについても、例えば進捗報告やヒアリング、ワイヤーフレーム作成やその他制作に関わるドキュメント制作などその内訳をきちんと説明なり、見積りの備考として明記する必要があると感じます。
デザインやコーディング、プログラミングなど項目名から分かりやすい作業というのは、作業内容に関しては突っ込まれることはあまりありませんが、ディレクションというとどこまでの範囲の作業内容なのかお客さまにきちんと納得していただけるよう説明する必要があります。
分かりやすいところで、ディレクションを例に挙げましたが、それは他の作業項目に関しても同じです。
一貫性のある説明できる見積りを作ることが大切。
工数というのは制作内容によって異なります。しかし、同じお客さまで同じような内容なのに、その都度工数が異なると「なんで前回とほぼ同じ内容なのに工数が違うの?」と突っ込まれてしまいます。
もちろん、表面的には同じような機能でも、内部処理の難易度によって工数は変わります。
しかし、ある程度基準というものを社内で設けて、一貫性のある見積書を作れるルールを作っておかないと、ころころと自社の制作費用感が変わってしまい、お客さまにとってみると、言えば工数は変えられるものなんだ、という誤った認識を持たれてしまうことにも繋がります。
同じ制作会社でもAという人に見積り依頼したら100万で、Bに依頼したら80万だったなんてことが起こらないように気を付けたいものです。
工数というのは、お客さまにとってみたらかなり曖昧な表現ですので、会社内で一貫性を持つことが非常に重要なことだと当社では考えています。
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Web制作は物販ではないので、明確な数字を出すことが出来ません。
何時間、何日このサービスをして時給いくらなどという形でも測れません。
インターネット、電子データ納品という手に持てる形ではないものを商材にしているので、言った言わないや認識の違いというのがどうしても発生してしまいます。
その中で少しでもお互いに気持ちよく、認識を合わせて制作を進められるのかというのが我々制作の課題でもあると思います。
今回は見積りに絞って書いてみました。