気を付けたい!Web制作でよくあるクライアントとの認識違い

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3月も近づき、制作業界は期末の納品で忙しい時期にやってまいりました。
どこの制作会社も忙しいことと思います。

受託制作をやっていると、クライアントによってWebサイトに対しての認識が結構異なります。制作の人間にとっては当たり前、常識、ということでも、きちんと説明しないと、後々に認識が異なってしまい、出来上がったサイトに大量の修正をしないといけない事態になってしまうこともあります。
クライアントとの認識違いがあると、「リテラシーが低い」と言われる方がいますが、制作を生業としているプロと、依頼しているクライアントの情報や知識量が異なるのは当たり前です。

私もよくやってしまうのですが、当たり前だからといって、ついつい確認を忘れたり、怠ったりしてしまい、制作者に迷惑をかけてしまうことがあります。
クライアントは制作会社に対して、企画提案もそうですが、事前に細かく説明と確認するなどのサポートがあることを要求されます。
当たり前のことだと思って確認していないと、後で「事前に説明がなかった」と言われてしまいます。

そこで、技術的な面だけでなく、実際の制作現場で見聞きしたクライアントとの認識違いのポイントを挙げてみました。
ディレクションの参考書などには載っていないような、現場レベルのポイントを挙げましたので、これからWebディレクターなんかになろうとされている方の参考になれば、と思います。

もちろん、クライアントによって確認のポイントは異なってきますので、その辺は悪しからず。

 

ブラウザで見たとおりに印刷できない

Webサイトはブラウザでみるものであって紙でみるものではない、というのは制作会社の主張で、多くの方は見た目通りに印刷できないことに対してストレスを感じます。
ページをコーディングする時に背景画像を指定していると、ブラウザの設定によっては背景が印刷されなかったりします。ブラウザの設定で「背景を印刷する」に設定すれば良い話なのですが、その設定自体をするのが分かりにくい、一般の人には分からないとされる方も多いです。

印刷用CSSなどで、印刷時にはナビゲーションを消すなどのカスタマイズより、とにかく表示されているものがPDFなどのように、そのまま印刷できないことにストレスを感じる方は多いです。

事前にきちんと説明しておかないと、見たまま印刷されるのが当たり前だと考えられている方の方が多いので、ここはアニメーションを使っているから印刷は別対応になる、など細かく確認しておくのが無難です。

特にコーポレートサイトなどの場合、印刷する必要はないだろう、と思っていると、営業の方が自社の実績を印刷して使う、などの用途も兼ねている場合もありますので、注意が必要ですね。

 

スマホやタブレットだと崩れる

レスポンシブなどのスマホ対応はさておき、スマホで見た時にナビなどが崩れてしまうことに対してストレスを感じる方もいます。
スマホ対応は別途費用がかかることは認識していただけるのですが、最適化されていないことと、崩れてしまうことについては別物だと考えられる方が多いです。

最近のWebサイトは横幅が広いので、viewportの設定をちゃんとしていないと、スマホで見た際に崩れてしまうこともあります。

タブレット端末でご覧になられる方も多いので、最適化するしないの確認もそうですが、崩れてしまうような恐れがあるレイアウトの場合は事前に保障するしない、といったことも確認しておきたいです。

 

CMSを導入したのにうまく更新できない

クライントが更新出来るよう、WordpressなどのブログツールをCMSとして導入することがあります。当社の場合は独自CMSを持っているので、毎回カスタマイズして導入していますが、ブログツールを導入されることをご要望されることもあります。

ブログツールを使ってサイトを更新する場合、ページを自由に修正できる反面、崩してしまうリスクもあります。大体の方が一回はやってしまいます。

崩してしまい、自分で何とかできなくなると、結局制作会社へ有償で修正をお願いすることになります。こういうリスクがあることも認識していただいたうえで、CMS導入については慎重に進めたいところです。

また、既存のブログツールなどを使うと、出来ることと出来ないことの制約も出てきます。
実際に導入してからやりたいことが出来ない、となると、クレームに発展する恐れも出てきます。
単純に更新できる、というだけでなく、どんなことをしたいのかを細かく事前に確認して、ツールの制約にひっかからないかどうかも確認しておきたいです。
運用面では、中には実際には時間が取れなくて、制作会社がCMSを使って修正するようなことも多くあります。これだと、結局メンテナンスで契約して制作会社に依頼した方が良かった、という話にもなりかねません。

本当に運用できるのか、CMSを導入した際の失敗事例やリスクなどもお話ししたうえで、導入を検討していただくのが親切だと思います。

 

提出するデザイン案の数

デザインを工数で出す場合、デザイン案の数も変わってきます。
何も取決めがないと、「もうちょっとアイデア出してよ」と言われ、結局こちらが2案のつもりが5案くらい出すことになると、工数ベースで赤字になります。

デザイン案の出し方は、制作会社によって考え方が異なってくるかと思いますが、工数ベースでデザイン費を出している場合は注意したいです。

費用内で提出できるデザイン案の数についても、見積りの際に確認しておきたいところです。

 

制作するページ、1ページのカウントのルール

1ページといってもスクロールして見せるながーいページもあれば短いページもあります。

当社ではA4サイズ、パワ―ポイントなどでA4サイズでワイヤーフレームを作った際の1ページをWebサイトの1ページとカウントします。

創業当初、特にその辺を気にしないで、サイトマップのページ数でカウントしていたら、ものすごく長いページを1ページとカウントしており、実際の制作時間に見合わなくなったので、カウント基準をきっちり設けることにしました。

これもきちんと説明しないと、クライントはサイトマップのページ数でカウントするのが当たり前だと思われます。

 

社内決定権のある方のブラウザで表示が崩れる

事前に対応ブラウザを決めるのは制作では常識ですが、その取決めがあっても、社長のブラウザだけが古くて、そこで閲覧できないとダメだ、ということになったりする場合もあります。

事前に確認しているので、制作会社の瑕疵ではありませんが、そういうこともあるという事はお客様に認識していただいた方が良いかと思います。

担当者レベルでは、最新のブラウザでいいですよ、ということで決めた対応範囲でも、最終決定権のある方のブラウザで見れないと覆ることもあります。

 

サイト名で検索エンジンにひっかからない!

公開したというから検索エンジンで検索したのに、会社名などでヒットしない!
SEO対策がされていないのではないか?
サイトを公開したらすぐにYahoo!で検索してヒットする、と思われている方も多いです。
ボットがクロールするまでの時間がかかるなんていうことは知らない方も多いです。

こういったことは、事前にひとこと説明しておくと、誤解を生まないかと思います。

また、SEO対策についても、費用の中に入っている・いない、など認識は合わせておくべきです。
当社はSEO専門会社ではないので、意識して対策はしますが、保証するものではないことは事前にお話しするようにしています。

 

アクセス解析が入っていない

公開したサイトのアクセスを知らないと、公開した意味がないといっても過言でありません。
アクセス数は何かしらの手段で当然確認できるものだと思ってる方が多いです。

GoogleAnalyticsなどを使うと、タグを埋め込む必要がありますし、サーバに付属しているアクセス解析なども設定しないと、初期では動作していないこともあります。

アクセス解析に使うツールなども最初にきちんと確認しておかないと、いけませんね。

 

キャッシュで修正がすぐに反映されない

サイトを修正したのに、キャッシュで古い情報が表示されてしまっている場合があります。
キャッシュをクリアして更新すればよいのですが、そんなこと分からない方が多いです。
閲覧した際に更新が反映されていないのは、不具合と考えられる方も中にはいらっしゃいます。
キャッシュをクリアと言われても、どこでクリアすれば良いのか、というところから分からない方が大半です。クライアントにとってみると、一般の方にも同じ現象が起きていたらどうしよう、と考えるのは普通です。
システムやCMSで更新した情報がキャッシュされていてすぐに反映されない、というのは結構なストレスです。キャッシュ周りの処理はプログラムなどで対応しておくことも大切です。

対応が難しいようであれば、クライアントに事前に説明のうえ、サイト上に注意を記載するなどの処置をあらかじめとっておくと無難です。

 

最後に

拙著で恐縮ですが、Web制作の受発注に関してトラブル事例などを挙げた本を書いています。
受注する制作会社の立場と、発注するクライアントの立場で2冊出ています。
トラブルに対して、弁護士の先生が法的な見解も示しておられるので、結構役に立つ本だと思います。
春になって、これからWeb業界に入ろうとされる方は是非手にとってみてください。

 

Web業界 発注制作の教科書 Textbook for order production Web industry


 

Web業界 発注制作の教科書 Textbook for order production Web industry

執筆者:高本

株式会社8bit 取締役の高本です。 社内のWebサービス企画、プログラミングや、売上・請求管理にいたるまで幅広く担当しております。

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