昨日10/27に私高本が執筆に携わらせていただいた「Web業界 発注制作の教科書 発売記念セミナー」で登壇させていただきました。
第一部の著者として制作現場レベルでのトラブル回避ポイントとしてお話しをさせていただきました。
どちらかというと受託制作で受注する側なので、発注者向けにポイントを解説することで、自分たちの首を締めることにもなりそうな気がしましたが、心を鬼にしてお話しをしてきました。
以下、昨日使用したスライドをSlideshareに掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。
私の話はさておき、第二部の藤井先生の法的なお話の中で、非常に勉強になる、制作会社としては恐ろしい法律のお話しを伺うことが出来ました。
私が個人的に気になったポイントをまとめてみました。
気になったポイント
裁判所は書面による証拠を重要視
言った言わないではなく、契約書や覚書を残しておいたほうに裁判は有利に傾くそうです。例えば、メンテナンス契約を巡って、メンテナンス契約したのに、修正をするたびに修正費用が発生するのはけしからん!と言って弁護士に相談した発注者がいるとします。
この時、制作会社の契約書にはメンテナンスには「ホスティングとサーバ管理のみ」と記載されていれば、いくら発注者が「契約時には修正も入っていると言っていた!」と主張しても、書面で記載してある内容が優先され、この場合、制作会社の方が有利だということです。
制作現場では、よく言った言わないの世界が繰り広げられますが、面倒でも仕様書や契約書には記載をしておくべきですね。
受注者は完成までを請け負う義務がある
例えば、デザイン制作で何度も何度も気に入らないということで、デザインの修正を余儀なくされることもあります。こういった時、最初の工数から徐々にはみ出してくると、制作会社として工数を盛りたくなってきます。
しかし、法的な見解では受注者は仕事を完成させる義務を負い、やり直しや代金支払いの保留、契約解除を出来るそうです。
制作会社にとってみると恐ろしい話ですね。
準委任の場合は受注者は完成義務を負わない
準委任というのは、例えばSEO会社によるSEO対策や広告代理店によるPRなどの活動です。制作の場合は請負ということになるので、仕事に関して発注者が納得いくものを完成させる義務を負うそうです。
ですので、例えばSEO対策やリスティングなどの広告運用をSEO対策会社や広告代理店に頼んでも、準委任なので、成果は問えないのです。
営業の方が「効果がある!」「即効性がある!」なんてことを言われると、発注する側としては期待してしまいます。
そして、成果が出ないときは「言ってることと違うだろ!」と言いたくなります。
しかしながら法的には、順位や会員増加などの実質的な成果は求められないんですね。
藤井先生は家庭教師の場合の話を例に挙げられていました。
家庭教師は勉強を教えるということは義務ですが、志望校に入らせる、という義務は負わない、と。
請負契約の場合、再委託(外注)に発注者の同意は不必要
Web制作のように請負の場合は、外注を使う使わないについては、特に発注者の同意は不必要とのことです。一応、契約書上で再委託について禁止されていれば契約違反なのですが、なければ法的には同意を取り必要はないそうです。
逆に準委任の場合は同意は必要です。
当社でも再委託でお仕事をいただくことも多いのですが、発注者の立場となると、その制作会社にお願いしたのに、黙って他所で作られていたら、あまり良い気はしません。
それで品質が悪かったり、納期が遅れたりしたら話になりません。
しかしながら、法的な見解だと同意が不要なんですね。。
もし、こういった場合にトラブルになった場合、法的には立証できないので、きちんと契約書で定めて、念を押しておく必要があります。
法的な話を伺って思ったこと
今回は、発注側に立ってセミナーでしたので、制作会社の私としては、「そんなにいじめないでよ」と思ってしまうような、発注する時の進め方について話を伺うことが出来ました。実際の現場だと法的な話を持ち出してどうこうというよりは、発注者と受注者の力関係で話が付いてしまいます。
例えば、多くの仕事を発注してもらっているクライアントとは制作会社は揉めたくありません。
ですので、法的な話を持ち出したところで、「御社を切る!」と言われてしまうと要望を飲むしかなかったりもします。
しかしながら、法的にどちらが正しいか、ということを認識しておくことで、安心感はあります。
ですので、法的なこともきちんと勉強して把握しておくことは制作業界に生きるうえで大切なことなのだ、ということをセミナーで再認識しました。
Web制作を進めるうえでもし、気になることがある方は、是非「Web業界 発注制作の教科書」をご覧ください。
セミナーで伺ったことよりさらに細かく解説が載っています。
受託制作でのトラブル事例などはこちら。
余談ですが、当社の契約書を藤井先生に確認していただいたところ、盛大にダメ出しを食らいましたので、Web業界 受注契約の教科書に付属の契約書フォーマットで改めて契約書を改定しようかと思っております。
お恥ずかしい限りです。