自分たちの制作価値を下げずに制作予算に合わせて作るには。

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制作の仕事で値引きの交渉をされることはよくあります。
ディレクターの方などであれば、大体の方が金額交渉をされた経験をお持ちだと思います。

出来れば値引きというのはしたくない、というのが受注する側の気持ちです。
言われてもいないのに、自分から進んで値引きます、という会社もなかなかないでしょう。

ただ、発注者は手持ちの予算の中で、欲しいものを最大限に手に入れたいと思うのが常で、受注する制作会社の思いとは相反することが多いです。制作会社としては制作費用は落としたくないけれど、予算の中で何とか出来ないと、案件自体を落としてしまうこともあるので、その駆け引きは非常に重要です。

仕事は取りたい、しかし予算の中では難しい。
あまりに割に合わない金額であれば、辞退する、という選択肢もあるわけですが、仕事は出来れば受注したいです。
単純に予算に合わせた見積書を作成すれば、仕事は取れるかも知れません。
しかし、それをやってしまうと、その会社の制作価値というのはどんどん下がってしまいます。

制作価値が下がると、その分仕事量を増やさないといけないので、当然制作者の仕事量は増えていきます。
仕事は増えるけど、制作費が安いので、給料も上がらない、まさにブラックな制作会社にまっしぐらです。

では、どうしたら制作価値を下げずにクライアントの予算に近づくことができるでしょうか。

当社の方針では、制作工数、制作にかかる日数を削減してしまうような値引きの仕方は禁止しています。
制作価値の話を冒頭でもしましたが、やることは変わらないのに工数を削除してしまうのは、制作価値を単純に下げていることに他なりません。

一番望ましいのは、制作費用の中で出来る範囲のことで手を打ってもらうことです。
これだと制作価値は下がりません。
例えば、この機能は今回の制作では予算オーバーなのでこの部分の制作は見送る、デザイン案は3案を2案にしてもらう、など、予算に応じて作業の範囲を縮小していくのです。

ここで重要なのは、この交渉をするためには、見積り条件と見積り項目をクライアントが取捨選択して計算できるよう、細かく設定しておくことです。
システム開発一式などのざっくりした見積りだと、どこまでが予算内で出来て、どこまでだと出来ないのかが曖昧なので、クライアントにも納得してもらうのが難しくなる可能性があります。
最初に何の制作に対して幾らかかるという項目を明示しないと、後からここまでは出来ない、と言われても、なんだか言われたから根拠を作り始めたという印象を抱かれても不思議ではありません。

発注する側も、制作費を安く済ませるために、あの手この手で交渉してきます。

よく、ページ数が多い作業に対して、バリュープライスのような値引きをお願いされることがあるのですが、制作というのは1ページ1ページ作っていくわけです。工場の製造ラインに乗せて作っていくわけではありません。
製造ラインのように自動化、機械化することで量産できるのであれば、生産の効率は上がりますので、バリュープライスということも考えられるでしょう。
しかし、制作はページ数が増えれば単純にページ数に比例して作業は増えていきます。
かかる時間も増えます。

確かにテンプレート化されたページを量産するのであれば、多少の効率よく量産することは出来るでしょう。
しかし、コンテンツ部分のレイアウトが異なると結局作り込み必要が出てきます。
そうなると、やっぱりバリュープライスは控えたいところです。

しかしながら、クライアントの予算がある中で、受注するためにはある程度折れないといけません。
強気の価格交渉でも案件を受注できる会社もあるかと思いますが、現実的になかなか難しいのも確かです。

どうしても予算の中で収めたい場合は、条件付きお値引ということで対応した方が良いでしょう。
結局予算に合わせるので、気持ちの問題になってきてしまいますが、かかる時間そのものを減らしてしまうと、「あの時はこの人日で出来たのに、今回はどうして出来ないんだ!」ということになりかねません。

その場限りで工数を落としてしまうと、後で他の案件で同じ工数で交渉される可能性が高くなってきます。
特に長く付き合いたいと思っているクライアントであればあるほど、工数を調整するのは控えた方が良いでしょう。

ディレクターなど、制作現場で実際にクライアントとやり取りしている方としては、クライアントの要望・満足度を高めたい、なるべくやってあげたい、と思うでしょう。それは、やって貰えれば誰だってうれしいし、それが費用外のサービスとなれば得した、と感じるでしょう。

しかしながら、良い物を作ろうと思うあまり、何でもかんでもやってあげてしまうと、それはプロではなくなってしまいます。
ビジネスではなくなってしまいますね。
それが次の仕事に繋がれば、という考え方も勿論あるにはありますが、制作価値という観点からするとどうかと思ったりするわけです。

制作現場で実際にやり取りしていると、こういったさじ加減がなかなかに難しいところです。

あくまで当社の考え方ですが、何かの参考になればと思います。

執筆者:高本

株式会社8bit 取締役の高本です。 社内のWebサービス企画、プログラミングや、売上・請求管理にいたるまで幅広く担当しております。

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