制作業界に身を置いていると皆さんどうしてもお金関係のことを嫌がる傾向にあるような気がします。
制作者に限らず、お金の交渉や話となるとどうしてもセコイとか汚いとかみみっちいとかマイナスなイメージが付きまとうようで、お金の話は抜きにして俺は良いものをただ作りたいんだ!という方も結構いらっしゃいます。
言いたいことはよくわかります。誰だってその辺は好きでやってるわけではありません。
ただ、フリーランスや起業された方ならわかると思いますが、良いものを作るには言いにくいお金を話というのは実は制作以上に大切なことだったりします。
当社ではなるべく定時に帰る(帰りたい)ということも去ることながら、費用や時間を意識することで仕事の質、制作物の質をあげていこうと思っています。
ですので、出来るだけ制作しているデザイナーにもエンジニアにも工数とお金に関わっていただくようにしています。
お金のことを意識することでクリエイターとして一人一人の役割で良い仕事が出来るようにもなると思います。
逆にお金の話を意識しないで良いものだけを作るのであれば、クリエイターどころかボランティアでありプロの仕事ではなくなってきますよね。
見積りを意識するということは、金額を知るというだけでなく、制作者として大切なことを意識することでもあります。
では、金額のほかにどんな効果があるのでしょうか。
仕事の条件をきちんと把握して仕事をする。
見積書を作成する時には必ずクライアントに予算というものがありますので、予算内でどれだけのこと出来るか、やるかということが焦点となります。例えばデザインひとつ取ってみてもレイアウトデザインのみで作図やイラスト制作は見積りの作業に入っていなかったとします。
これをきちんとデザイナーさんが把握していなくて善意で色々と時間をかけてイラストや作図をしてしまうと金額(工数)としては赤字ということになってしまいます。
もちろんこれはディレクターなり管理している人間が正しく伝えるべきではありますが、同じチームで制作する一員として制作者であるデザイナーも認識しておくべきだと思います。
そうすることで、自分たちの制作技術を無駄に使うことは少なくなってきますので、自分たちの仕事の価値を下げてしまうことの防止になります。
制作にかける時間間隔を養う。
制作というのは人が動いた時間を金額に換算するのが一般的です。例えば見積り書を見て工数を確認することで、自分がデザインでかけられる時間数を理解するということになります。
時間に関係なくクライアントの満足いくものを追及したいんだ、という方もいらっしゃると思いますが、それをしてしまうと結局予算以上の動きをしてクライアントとしてはサービスしてもらって良かった、という話になるかも知れませんが、会社としての利益は出ません。
工数を意識して仕事をすればその分他の仕事も消化できますし、それでも時間が余ればスキルアップに時間を回すことが出来ますので自分のためにもなります。
なにより、時間を意識することでゴールも見えてきますので集中力も増すと思いますし、無駄な残業も減ってくるのではないでしょうか。
制作業界特有の遅く出社してだらだらと遅くまで残業して、残業している人が頑張っているというよく分からない雰囲気も工数を意識していないからそういうことになるんじゃないのかな、と思います。
きちんと決まった時間内でピンポイントで良いものを作れるのが優れたクリエイターですよね。
仕事の落としどころを考えるきっかけに。
もし、制作業界でオペレーターではなく、クリエイターとして活躍したいなら、費用のことに携わることで本当の意味でプロとして仕事について考えることが出来ると思います。のべつ幕無しで時間をかけて何度も何度もクライアントの言いなりにデザイン修正を行うことはクリエイターの仕事ではなくオペレーターの仕事にはなってしまいます。制作はゼロの状態からイメージのすり合わせをしますので、イメージが異なれば幾らでも時間をかけられます。
それをやってしまうと時間と費用がまったく合わなくなり、少なくとも会社としては仕事として成り立たなくなってしまいます。
そういう時、落としどころが費用(時間)との兼ね合いになってきます。
それはデザインでもシステムでもなんでも同じですが、要望に応えるために使う時間は使えば使うほど金額としては上がっていきます。
ですので予算がある以上、その中でやらなければなりません。
見積り金額を意識することで、いかに効率よくクライアントを納得させることが出来るか、クライアントの要望をうまく取り入れた制作物を制作することが出来るかということを考えるきっかけになると思います。
残業は工数ではない。
当社では工数換算は基本的には1日8時間(定時出社退社)を基準として考えています。ですので、残業時間は含んでいませんし土日も含んでいません。
もちろん的確な工数を算出することが第一なのですが、残業自体あまり効率良いことではないということがさらに明確にわかります。
残業もどうしてもという時はありますが、工数を意識し始めると意味のある残業なのかどうなのかということは分かってくると思います。
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我々制作の仕事の値段は時間で換算されるということを冒頭にも書きましたが、その時間は制作者が実務や専門学校で学んできた時間に対する値段であったりもします。自分たちの仕事の見積書を見ることと意識することは自分たちの技術の価値を下げないことにもなると思います。
そういった意味で金の話は抜きにしてクライアントの要望に応えるのがクリエイターだ、というのはちょっとどうなんだろう、と思ったりもするわけです。