Webデザイン制作費における需要と供給の価値感の違いについて

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最近、クラウドソーシングにおける制作費用のことがネットで話題になっていました。
制作費が安すぎるとか買い叩きのような意見は恐らく制作に関係されている方の意見なのではないかと思います。

しかし、クラウドソーシングで提示されている制作費を「安い」の一言でくくってしまうとそれまでです。私は自分たちの制作費について考える良い機会だと考えます。

デザイン制作費について何とかならないか(値引いて欲しい)、というご相談を受けることがあります。
しかし、システムについては言われません。
予算がなければこの機能は作れない、ということについてはほとんどの方が納得されます。

それは何故でしょうか。

制作側の考える制作の価値観と、発注者の考えている価値観には隔たりがあるようにも思います。

この辺りのことを踏まえて、今回はデザインの制作費について書いてみたいと思います。

 

デザイン制作費の算出の仕方

まずデザイン制作費の算出の仕方から説明します。
制作会社によってまちまちだと思いますので、今まで私が見てきた見積りの内容で紹介します。

まず、当社の算出の仕方ですが、工数つまりデザイナーの動く時間で算出します。
ひとりのワイヤーフレームを確認のうえ、レイアウトのパターン数、難易度、アイコンなどの素材の作り込みなどの要素から、ひとりのデザイナーがデザインを制作するのに何日くらいかかるか、を考慮のうえ検討します。

あるいは、一式50万など単価で算出される会社もあるようです。

発注者からみると、その工数や単価が妥当なものなのかどうかは、はっきり言って判断付きません。
もちろん、どこそこの制作会社は幾らだったのに、なんでおたくはそんなに高いんだ!という不満くらいはあるかと思います。

しかし、デザイン費の算出の仕方は文句を言ったところで、その制作会社の制作に対しての付加価値の考え方なので、なんともなりません。

 

制作費の相場はあってないようなもの

では、デザイン制作費の相場はあるのでしょうか。
個人的にはあってないようなものだと思っています。

実際に制作会社の料金帯をみてもピンからキリまであります。
私自身、制作会社を何社か経験していますが、その制作会社によって単価も見積りの算出の仕方も、かなり異なります。

では、妥当な制作費用とは何でしょうか。
それは、発注者の価値観とデザインに対しての考え方になるかと思います。

プログラミングやHTMLコーディングは感覚ではなく、表示されるかされないか、動くか動かないか、ですので、納品すべきものは明確です。
しかし、デザインの場合は明確な正解がありません。
正確にいうと発注者が納得すれば、それがひとまず受託制作においては正解だと思います。
もちろん、実際に使うユーザー目線とかありますが、その制作会社の主張も、発注者を納得させないことには受託制作としては成り立ちません。

デザインの価値でいうと、思っていたより少し高いな、と思ってもデザイナーの考え方やアイデア、センスに共感できたので、ちょっと奮発してこの方にデザインをお願いしよう、という判断もあるわけです。そこは、デザイナーとかディレクターの腕の見せ所なのでしょう。

 

デザインの価値は発注者が決めるもの

例えば、発注者が4万円でロゴを作って欲しい、と言っているところに10万円の見積りをぶつけてもナンセンスです。恐らく、ロゴに関して4万円という価値観の方に、どれだけすごいデザインを見せても、その価値が10万円になることはないでしょう。
その方にとってはロゴは4万円で欲しいものであって、それ以上の物ではないということなのです。
デザインにそれほどこだわりはなく、取りあえずあれば良い、と思っている方も当然いらっしゃいます。

クラウドソーシングで発注者の方が提示されている予算は、そのことを顕著に表しているように思えます。

制作者の中には、こういうことを「買い叩き」と非難される方もいらっしゃいますが、消費者である発注者にとってはその位の価値観なので、買い叩いているわけではありません。

それを請けるかどうかは制作側の判断です。
正確にいうと、請ける方がいるから、買い叩きと言われている制作費も成り立つわけです。

例えば、フリーランスなど個人の方が4万円でも仕事がないよりはやった方が良い、ということでその制作を請けたとしても、需要と供給が合っているので、それは買い叩きでも何でもないのです。

制作会社で請け負うには、人件費や様々な維持経費などを考慮しないといけないので、ある一定の金額で請けられない場合もあります。
原価より安い値段で物を売ったら赤字になるのと同じことです。

デザイン費の安い高いについては、発注者と制作側のお互いに提示し合った価値観が合ったところで生まれるものだと思います。相場というと結構難しくて、発注者の方は自分の価値観で作ってくれる人を探す、しかないのではないでしょうか。

 

デザイナーのセンスを買ってもらえるのが一番幸せ

Web制作の仕事をしていて思うのは、まだまだパンフレットなどの紙のデザインと比べると、デザイン費は安くみられています。

では、制作会社にとってデザインを受注する際に一番良い条件とは何でしょうか。
当社の考え方としてはデザイナーのセンスや提案力を買ってもらうことです。

例えば、佐藤可士和さんなどのように、誰でも知っているロゴやブランドを作った方に対して依頼する場合は、それなりの費用を覚悟するはずです。

著名なデザイナーさんはそれなりの制作費を取っていると思いますが、デザイナーの実績とセンスが認められると、そこに市場とは関係なく自分の価値を付けることが出来るのです。

デザイナーの方が目指すべきなのはここではないかと思います。
「いや、違う!本当に良い物を作ることなんだ!」と言われるかも知れないですが、少なくとも制作会社してデザイナーに求めるのは、制作の腕もそうですが、デザイナー本人のセンスを買ってもらえることです。デザイナーを芸術家として雇っているわけではありませんので。

ですので、このデザインと同じテイストでお願いしたい、などの依頼は会社としても嬉しい限りです。
デザイナーにとってもやりがいも出ますし、一番幸せなのではないでしょうか。

 

本当に制作の価値を下げるのは根拠のない値引き

制作価値を下げる、という面においては、最初に提出した費用から、受注するために大幅に根拠のない値引きや工数調整をすることです。
発注者から取ってみても、これだけ費用下がるのに最初の見積りは何だったんだ、もしかしたら言えば幾らでも下がるのではないか、ということになりかねません。

発注する側に立ってみれば、費用内でサービスしてくれるのであれば、いくらでもお得にサービスを受けようと思うのは当たり前の話です。

それこそ、制作の苦労がどんどん報われなくなっていくので、制作の価値を下げることに繋がります。
正直なところ、当社でもお値引はします。
出来ればご相談いただいた案件はお請けしたい、と思っておりますので、予算から足が出ていた場合は出来る限りの努力はします。

 

受託制作をしていると、常に価値観の擦り合わせの毎日です。
ネット上で制作費に関する話題は散見されますが、そういった話題を見ていると、常に発注者の価格ニーズと自分たちの制作価値について向き合っていかないといけないな、ということを痛切に感じます。

執筆者:高本

株式会社8bit 取締役の高本です。 社内のWebサービス企画、プログラミングや、売上・請求管理にいたるまで幅広く担当しております。

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